看護学科1年生の授業と劇

先週は、授業がたくさんあった。その中のひとつ、今年は看護学科1年生の図書館利用法の授業の中に、図書館職員による劇(寸劇?演劇?)を取り入れてみたが、大変好評だった。

看護学生に図書館を利用してもらう導入として、去年まで「ナースの図書館活用術」というビデオを見せていた。
内容はこんな感じ。ナースの卵である「野村さん」が、看護実習時になかなか子供が泣きやまなくて困っているというのが初めのシーン。ベテランナースはいとも簡単に泣きやませていると聞いて、どうしてだろう?と疑問を持って直接聞きにいくと、答えを教えてくれず「図書館で調べてみたら?」と図書館に導かれていく。図書館職員に図書館の使い方を教えてもらいながら、資料から情報を探し出して、疑問を見事解決するという物語である。

看護学生がとても身近に感じるであろう状況と、図書館とをうまくつなげていて良いビデオだったのだが、1994年の発行で、図書館職員が「じゃあ、分類カードで調べてみましょう」などというので、時代に合わなくなってしまった。

もういい加減これはまずかろう、いや、カード目録だなんて、本当はもっともっとずいぶん前からまずかったのだが、ビデオの後で「現在はカード目録はありませんが…」などと補足してすませていたのである。

そこで、ビデオを元にシナリオを作り、看護学生が子供を泣きやませたいという疑問を持って図書館に来るというストーリーで演じてみた。内容はわが大学図書館に即したものにして、パワーポイントを併用して写真を投影したり、OPACの画面を投影したりした。
ナース服などの衣装も先生方にお願いして調達した。笑いを取る必要もあろうと、看護実習生の役は意表を突く50代の男性にお願いして、服装は男性用だが「そうよね」とか女言葉を話してもらい、性別不詳の雰囲気を出した。演技指導は、図書館職員の中に実は女優さんがいるので、その人が稽古をつけてくれた。

ほんの10分ほどの劇であるが、上演すると、ビデオでは半分寝ていた生徒たちがクスクス笑い、劇の間は全員覚醒していた。その後の説明も大体ちゃんと聞いて、実習につなげることができた。アンケートには「劇がよかったです」「これからもっと図書館を使いたいです」などと、たくさん書かれていた。また実習を見ていると、1年生のゴールは、ひとつはOPACが使えることであるが、それもちゃんと身につけていた。

予想外の反響の高さに嬉しいより驚いた。やはり、画面のことではなくてライブなのが良いようだ。自分たちでシナリオを作るので、内容もこの図書館に即したものにできる。劇のおかげで、学生は例年に比べてキャストの図書館職員に対して親近感を持ってくれたようで、職員と学生の間の壁がずいぶん低くなったように感じたのも素晴らしい。

別の効用は、図書館職員の方にも表れた。キャストの図書館職員が楽しんで、より良いものにしようとがんばってまとまったことがひとつ。それから、これまで何年もの間、図書館利用法の授業に全く興味を示したこともない他の図書館職員たちが、同僚が演じる劇を観たいと言い出したことである。

近年、図書館で利用方法のビデオを撮影してPodcastで流したり、ホームページで公開したりという高度なことをしている大学図書館が出てきているが、結局、紙で説明するにせよ、ホームページに置くにせよ、利用者に図書館の使い方をわかってもらいたいという目的は同じである。インターネットやWeb2.0などの時代の波を捕まえて、新しい技術を選択肢に入れていくのかどうか。また、人員削減の中で、どうやって少ない労力で最大限の効果を上げるかということを考えなければならない。

劇による図書館利用法説明は、手間ひまかかるし費用対効果は少なめにも思える。ビデオなら、ひとりでビデオをセットしてボタンを押すだけでOKだが、今回は5人の図書館員が台詞を覚え、リアクションを工夫し、全員で4,5回練習を重ねる必要があった。ただ、時代が後退しているように見えるかもしれないけれど、劇により、ライブ感が学生ひとりひとりをひきつけ、実際の図書館利用をしたいという思いにつながったという効果はこれまでに感じたことのないがっちりした手ごたえであり、計測できない良いところがあった。