一般演題II  情報の分析・統計

05. 開発途上国研究者の情報生産と利用―医学分野におけるHINARIイニシアチブが与える影響

城山 泰彦(順天堂大学図書館)
http://mis.umin.jp/26/program/oral-05.pdf

WHOやHINARIについては、相当多くのことがWeb上に公開されているようなのだが、英語だし、面倒だから…とついアクセスせずにしまってあることをいろいろ調べて教えてくださるというのはいい機会。

途上国に対して無料で電子ジャーナルを提供するというのは、素晴らしい考え。しかし、「アフリカ5 か国における医師の主要なInternet アクセスポイントは,Internet Cafe が47%で最も多かった。」とのこと。個人でコンピュータを持つのではなく、大学や病院でアクセスするのでもなく、インターネットカフェ。中身が提供されても、アクセスするマシンが全然足りていないのではないだろうかということが気になる。でも、HINARIによって学術文献の生産量が増えていることがわかったということで、充実感はあった。

06. MIS参加者に関する計量情報学的分析

小野寺 夏生(筑波大学)
http://mis.umin.jp/26/program/oral-06.pdf

Lotkaの法則の式は次のとおりである。 f (X) = C / Xα

などと言われては初めから聞く気を無くしそうになるが、それを十分予測して、私たちの興味を引く話題を導入部分に挟まれるところはさすが先生という感じだった。それにしても、この大会の参加者に関する分析をしてみようと考えるのは面白い。今回が26回目であるが、25回すべてに出席していた人は1人だけとのことだった。その方は、もちろん今回も出席。それだけでなく、発表もされていた。

07. 総合医学、内科誌Impact Factor上位3誌の被引用回数とMEDLINE Publication Types の2002-2006年調査―前向きコホート研究

三浦 誠(九州大学情報システム部情報基盤課デジタルライブラリー担当)
http://mis.umin.jp/26/program/oral-07.pdf

あまりに盛りだくさんな内容で、頭がついていかなかった。みんな理解できたのだろうか。私だけ?

大変な情熱を傾けて研究されたということと、発表者が大変感じがよくていい人なのだろう…ということはひしひしと伝わってきたのであるが。

スライド上では細かい表がくるくると変わっていって、どこを見たらいいのかわからず、前回発表された調査と比較しておられたようなのだが、前回の調査の内容は何だったのだろう…とわからないままだった。これは、もっと抄録を読み込んでおくべきだったか。

08.テキストマイニングによるアスベスト研究の分析

青木 仕(順天堂大学図書館)
http://mis.umin.jp/26/program/oral-08.pdf

及川さんと同様に、日常感じた疑問を調査研究に向ける、ということの大切さをいつも教えてくださる大先輩。アスベストはすでに使用が中止されているし、何年か前に流行った病気に関するキーワードにすぎないのでは、という印象を持ったが、それは間違いとわかった。現在もアスベストを使って作られた学校などがそのまま放置されているし、そもそもアスベストを吸い込んでから中皮腫などの深刻な病気が表れるまでには何十年というタイムラグがある。現在も、そしてこれからも、中皮腫になって病院に来る人が次々と現れる可能性があり、決して過去の問題ではないのである。

順天堂大学の病院では、アスベスト外来が設置されているとのことだった。

09. 日本の新聞に取り上げられる科学論文の傾向について ―医学論文を中心に

大谷 裕(東邦大学医学メディアセンター)
http://mis.umin.jp/26/program/oral-09.pdf

何でこんなことを調べようと思ったんだろう。目の付けどころが面白い。本当に人の研究発表というのは面白い。

一般の新聞で、「○○大学の○○研究グループが○○について明らかにしたことを『サイエンス』誌に発表した」などという記事が時々載っているが、実はScienceとNatureについては、新聞等のメディア向けに、プレスリリースを日本語で行っていると聞いて納得した。新聞社の人が、Natureグループの雑誌やScienceなんかを、電子版で毎日チェックしているのだとすれば、結構大変そうだから。新聞を読んでいると、NEJMとかLancetなんかもたまに載っているように思うけど、そちらは英語のプレスリリースがあるのだろう。

科学技術分野の中で、医学分野は最も多く取り上げられる分野だというのには少しびっくりした。やはり自分の体のことや健康のことだから、興味を持たれやすいのだろうか。また、遺伝子関連のニュースが多いことも挙げられるだろう。

プロダクトレビューでは、各社5分で業者さんがPR合戦を繰り広げるのだが、やはり営業さんのトークの中には素晴らしいものがあり、これも勉強になる。あれこれ紹介しすぎて自爆してしまう人、営業担当者ではないのかとりとめのない話をして時間切れになる人もいるが、制限時間内にぴたりと商品のPRをまとめてくる担当者の話はつい聞いてみたくなる。また、ただ製品を紹介するだけでなく、自社製品に関する調査結果などの付加価値を内容に入れている発表については素晴らしかった。